ハリー・ポッターシリーズの中でも、最も誤解され続けた人物――それがセブルス・スネイプです。
冷たく、意地悪で、時には敵に見える教師。しかし物語を“スネイプ視点”で振り返ると、
ホグワーツで起きた多くの事件には、まったく違う「真実」が隠されていたことが見えてきます。
この記事では、スネイプの目線から主要な事件を読み解き、
彼がどんな葛藤と覚悟を抱えていたのかを深掘りします。
🧪第1章:ハリー・ポッターとの初対面 ― 「憎しみ」ではなく「痛み」
スネイプが初登場するのは『賢者の石』。
授業中にハリーを厳しく問い詰め、冷たい視線を向ける印象的なシーンです。
しかし、彼のその態度の裏には、複雑な感情の交錯がありました。
ハリーの顔には、かつて愛した女性・リリーの面影があり、
同時に、彼女を奪ったライバル・ジェームズの姿も重なります。
つまりスネイプにとってハリーは、
「愛と憎しみ、過去と贖罪が同居する存在」。
彼が冷たく接したのは、憎悪ではなく、心の整理がつかない痛みの表れだったのです。
🧬第2章:賢者の石事件 ―「疑われる役割をあえて引き受けた男」
ハリーの初年度に起こった“賢者の石”を巡る事件。
観客や読者の多くが「スネイプが黒幕だ」と信じました。
しかし、真実はその逆。スネイプは一貫してハリーを守っていたのです。
クィディッチ試合中、ハリーの箒が暴走したとき、
スネイプは対呪文を唱えて助けようとしていました。
それなのに、ハーマイオニーが「スネイプが呪ってる!」と誤解し、火を放つ――という皮肉な展開。
彼が受けた“疑惑”は、もしかすると意図的でもあったのかもしれません。
人々に信用されない立場を引き受けることで、
闇の勢力から疑われずにハリーを守ることができたのです。
🧫第3章:双重スパイの葛藤 ―「ダンブルドアとの密約」
スネイプの最大の秘密は、「ヴォルデモートとダンブルドア、両方に仕える二重スパイ」であったこと。
しかし実際には、彼の忠誠は最初から最後までリリー・ポッターへの愛にありました。
ダンブルドアと結んだ密約は、「ハリーを守るために闇側に潜り込む」という危険な任務。
スネイプにとってそれは、贖罪であり、唯一の生きる意味でもありました。
「彼が死ぬまで続けた“裏切りの演技”こそ、最大の忠誠だった。」
この構図は、日本的な「忠義」「忍耐」「陰の功労者」という価値観にも通じ、
多くの日本ファンがスネイプに心を寄せる理由の一つでもあります。
⚗️第4章:プリンスの正体 ―「自分の弱さを知る天才」
『謎のプリンス』で明かされる「ハーフ・ブラッド・プリンス」という名前。
それはスネイプが若い頃、自分を鼓舞するためにつけた“別名”でした。
純血主義に苦しみ、貧しい家庭で育った彼は、
知識と魔法力で自分の存在を証明しようとしました。
その過程で見せる「力への執着」は、一歩間違えばヴォルデモートと同じ方向へ進んでいたかもしれません。
しかし、リリーへの想いが彼を“闇”から引き戻した。
プリンスという名は、「闇と光の間で揺れる自己肯定の象徴」だったのです。
🧴第5章:ダンブルドアの最期 ―「涙の決断と赦し」
シリーズ屈指の衝撃シーンが、スネイプによるダンブルドア殺害。
しかし、彼が行ったのは“殺人”ではなく、“慈悲”でした。
ダンブルドア自身が、呪いによって余命わずかだったこと、
そしてマルフォイを闇に堕とさせないためにスネイプに頼んでいたことが、後に明かされます。
その瞬間、スネイプの中で「命令」と「愛」が衝突しました。
恩師を殺すことで、ハリーを守り、マルフォイを救い、任務を完遂する。
その苦しみを一言も口にせず、ただ“悪役”を演じ続けた姿に、多くのファンが涙しました。
🕯️第6章:最期の記憶 ―「Always」に込められた意味
最終巻で、スネイプがダンブルドアに言い放った名セリフ――
「After all this time?」
「Always.」
このやり取りは、彼の人生そのものを象徴しています。
どんな苦痛の中でも、愛した人のために行動し続けた。
“いつまでも、変わらずに”というこの一言が、全ての動機を説明しているのです。
スネイプの人生は、派手な魔法や戦いではなく、
**「沈黙の中の強さ」**によって描かれた、もう一つの英雄譚でした。
🪄まとめ:スネイプは「悪役を演じきったヒーロー」
ハリーが知らなかったところで、
スネイプは幾度となく彼を救い、裏から物語を支えていました。
もしホグワーツの事件簿をスネイプ視点で書くなら、
それは“裏切りの記録”ではなく“愛の記録”です。
不器用で、誤解され、孤独の中で使命を貫いた男。
彼こそ、真の「ホグワーツの守護者」だったのかもしれません。

